2021年3月3日にaiko14th『どうしたって伝えられないから』のアルバムが発売されました！
アルバム曲『磁石』では、浮気された辛い経験を乗り越える失恋の曲となっていますが、恋に悩む乙女心をくすぐる歌詞とメロディーになっています。

今回はそんな名曲『磁石』の歌詞の意味を徹底考察・解説しました。
この記事を通して、さらに『磁石』から元気をもらってくれる人がいれば、嬉しいです。

aiko「磁石」歌詞の意味を徹底考察・解説！

ポップな曲調から始まるイントロ。

『磁石』には、吸着・反発を起こすという特性が挙げられますが、私たちの圧倒的な印象は“吸着”の方ですよね。だってホワイトボードにマグネット付きのペンを常備しておいたり、冷蔵庫に買い物リストを張れたりするのも、すべて磁石の”吸着”の特性を利用しています。

そのため、『磁石』というタイトルやポップなイントロから「両想いの明るい恋の曲」かな、なんて思っていましたが、今回の『磁石』では、吸着ではなく、“反発”の方の意味合いで使われていることに驚きとギャップを感じました。
しかし、歌詞をじっくり考察していくごとに、なんとも歌詞とメロディーがしっくりとマッチしていきます。

相手の浮気を勘づいてしまったけど、言えない自分がいる
音楽で気分を上げようとするものの、自己嫌悪に陥る日々
相手への好きだけじゃない尊敬と憧れの気持ち
相手の浮気を確信するものの、あたしも本人に直接確認しない
別れを決心する主人公
戻れるかもという期待と諦め
遂に別れを決断し、一人になる
失恋を乗り越えて、一人で新たな道を進む
まとめ

相手の浮気を勘づいてしまったけど、言えない自分がいる

言えなかった訳じゃないの　言わなかっただけのこと
同じ部屋で何度も別れてくっついた
魔法なんて無くて本当に有るのはここにいることだけ　あなたがいることだけ
出典　作詞・作曲:aiko

主人公は、ある時、相手の浮気を知ってしまったけど、認めたくなくて相手の浮気を確認できなかった自分がいました。

あの時、「浮気してるの？浮気しないで」と言える自分がいればよかったと後悔しているものの、結局別れる運命だったから「言わなかったんじゃなくて、言わなかっただけなんだ」と自分を正当化しています。相手に対する反発心が少し生まれているのがわかります。

これまでに、何度も揉めて喧嘩して、お互い別れかけたこともあったけれど、最終的にはあなたはいつも戻ってきてくれているから、未だ私への想いは離れていないとも思っていたようです。

ここでは、『磁石』の吸着・反発の特性を「言わなかっただけ」「何度も別れてくっついた」という歌詞に上手にリンクさせています。

音楽で気分を上げようとするものの、自己嫌悪に陥る日々

感情に飲み込まれ　どうしていいのかわからず
耳いっぱいに詰め込んだ輝いたミュージック
自己嫌悪机のシミに嫌気が差した　なんかそんな日は突然やって来てね
出典　作詞・作曲:aiko

相手が自分から少しずつ離れていくのを少しずつ感じていました。
でも、どうしたら再び自分のことを一途に想ってくれるのかわからない。

とりあえず、気分を上げてみようと、明るいポップな恋の曲を聴きまくってみるんです。
大好きな曲や恋が叶う曲など、たくさん聴いたことでしょう。

でも、そんなことをしていても現実は変わってくれなくて、結局浮気されるのは、自分に魅力がないからだ、と自己嫌悪に陥ります。
机が濡れるほどに、涙が止まらない日が突然やってくるのです。

ここでは、「自己嫌悪」と「嫌気」というワードを重ねることで、「自己嫌悪」に陥っている自分にすら「嫌気」が差してしまっている哀しみと痛みを表現しています。
また、涙と直接言わずに「シミ」というマイナスな印象に変換しているのも、突然「シミ」ができてしまった時のショックな感情(シミって突然できますよね)と重ねているのかなと思いました。

このように失恋真っ盛りの歌詞ですが、曲全体がポップな曲調になっているのは、恋に悩んでいても「輝いたミュージック」を聴いて少しでも気分を上げてほしいというaikoからもメッセージなのかなと思いました。

相手への好きだけじゃない尊敬と憧れの気持ち

あなたを大好きなあたしがいるのは
あなたにずっと憧れていたから
出典　作詞・作曲:aiko

相手を大好きな理由には、「ただ好みだった、気が合うから」などという単純な理屈ではないことがわかります。

ここでは、具体的な内容は書かれていませんが、相手への憧れという尊敬できる部分があって、それも含めて好きになったのだとわかります。
しかし、「大好きなあたしがいる」は現在形、「憧れていた」は過去形であることから、「今も大好きな気持ちは残ってしまっているけれど、あなたみたいな素敵な人になりたいという憧れはもうないよ」という解釈になります。
浮気するような相手への尊敬の念はなくなってしまったということですね。

相手の浮気を確信するものの、あたしも本人に直接確認しない

匂いの散らばるジャケット
帰って来たらいつもバツが悪そうに椅子に丸まって
膨れたポケットろくなもんじゃない
多分「それなに？」と聞くあたしもいない
出典　作詞・作曲:aiko

相手が自宅に帰ってきてはくれるものの、そのジャケットには私の知らない香水の匂いが染みついていて、そのポケットには私が知らないものがたくさん入っているようです。
浮気相手と遊びに行った時のレシートの山かな、全部奢ってあげてるのかな、などと嫌な想像が頭をたくさんよぎりますが、ポケットの中身について「それなに？」と聞くこともありません。

お互いが大好きだったころの両想いに戻ろうという気持ちも薄らいでいることが分かります。
「それなに？」と聞くこと自体も悔しくて反発している自分もいるのだと思います。

2番から、別れようかな、と主人公が葛藤している様子が伝わってきますね。

別れを決心する主人公

繋ぎ止めていた理由に嘘が生まれ
書き直した心に浮き出したダミー
目に付く思い出　薔薇色　桃色
枯れてもあの日を責めたりはできないよ
出典　作詞・作曲:aiko

今まで別れたくないという気持ちが残っていたものの、繋ぎ止める理由もないと判断し、主人公は別れを決心します。
私たちの恋は、本物ではなく、見かけ上のもの(＝ダミー)だとわかります。

なんで付き合ったんだろうと後悔しそうになることもありますが。鮮やかな楽しかった記憶は良き思い出として残っています。
未だ主人公は相手のことが大好きであるからこそ、相手を責められないという強さと辛さが感じられます。

ここでの「ダミー」の歌詞の部分は、1番では「ミュージック」でした。自己嫌悪に陥りながらも聞いていた「輝いたミュージック」を経て、この恋は「ダミー」であることに気づきます。

自己嫌悪なんかに陥る必要なんてなくて、「ダミー」の恋ならやめてもいいんじゃない？というaikoからもメッセージが聞こえてきそうです。

戻れるかもという期待と諦め

あなたを大好きなあたしがいるのは
あなたにずっと憧れていたから
瞬間ときっかけがこっちを見ている
諦めと嫌いはもう抱きしめ合ってる
出典　作詞・作曲:aiko

まだ私のこと好きかも、と感じる瞬間や何かのきっかけで私のところに戻ってきてくれるかも、という期待がいまだにあります。
しかし、諦めの気持ちの方が私の心に強く残ってしまっている様子を表しています。

ここでは、「瞬間」と「きっかけ」が磁石のように再びくっついてきそうになるものの、「諦め」や「嫌い」の方が磁石の吸着力が強いです。
修復する余地はないことがこの歌詞から伝わってきます。

遂に別れを決断し、一人になる

悩んでひとりぼっちになった　そしたら朝が眩しかった
知らなかったよ　こんな世界も
走りきったよ　あたしの想いも
出典　作詞・作曲:aiko

悩んだ末、別れることを決意したあたしは、一人で朝を迎えます。
すると、思った以上に空は明るかったのです。
今まで、悶々と苦しんでいることが多く、朝の明るさなんて感じなかったのかな、と思います。

主人公は、失恋を通り越して、初めて一人の世界を知ることとなります。

ここでは、乗り越えた失恋の痛みを「走りきった」と表現している点に強さを感じます。
失恋すると、自分のこれまでの過去を否定したり、次の恋に踏み出す勇気が出なかったりと、気分がいつまでも明るくならないことが多いです。
しかし、「走りきった」という表現は、自分の決断は間違ってなかった、この辛さを乗り越えられたなら自分は大丈夫と背中を後押ししてくれているようで、とても元気をもらえます。

失恋を乗り越えて、一人で新たな道を進む

あなたを大好きなあたしがいるのは
あなたにずっと憧れていたから
反発しあってもうくっつかない磁石
触ると色が変わる細い血管
出典　作詞・作曲:aiko

1番のAメロでは、「何度も別れてくっついた」と磁石がくっつく様子を表していましたが、最後のサビでは、「反発しあってもうくっつかない磁石」とあり、物理的にも心理的にもお互いに離れたことを強調しています。
「反発しあっ」たことから、別れる際は揉めたかもしれないと想像できます。
「色が変わる細い血管」というのは、磁石の色が変わってしまい、くっつかなくなってしまったという意味合いと重ねているのかな、と考察しました。
「触ると」色が変わってしまい、反発してしまうので、もうくっつくことはなさそうです。

曲全体を通して、「あなたを大好きなあたしがいるのはあなたにずっと憧れていたから」という歌詞が3回登場します。
未だにあなたのことが大好きだけど、憧れる部分がなくなってしまった悲しさと、別れるという選択をした自分を受け入れる強さを表現しているのではないかと思いました。